「奇跡です。ありがとうございました。この子が◯◯中学男子部に合格したなんて信じられません。」
このご家庭からは3人の兄弟姉妹を預かった。
一番上の姉は公立高校志望で内申点45(9教科オール5)を武器に、愛知県公立トップ高校に推薦合格。
二番目の兄は、日能研模試偏差値63を武器に、愛知県の私立共学校のトップ中学に進学した。
いわゆる、できの良い二人は、母親は全く心配せず、末の弟の心配を常にしていた。
高望みはせず、愛知県の中堅レベル狙いだったとはいえ、第一志望校の合格は心の底から喜んでみえる様子だった。
末の弟は、姉兄二人ほど学力はなかったが、私が担当した理科の授業の中でも特に生物の授業にはとても興味を持ち、昆虫に関しては本当に詳しい知識を持っていた。
いつも昆虫について、質問に来たり、熱弁していたのを覚えている。
時が流れて、15年後に、突然、この母親から連絡をいただいた。
この3人は、立派に社会人として就職したそうだ。
ところが、末の弟はどうしても大好きな昆虫の研究をしたいと願い、会社を辞めて、勉強しているということ。
あいつらしいな。
1年後、再びこの母親から連絡があった。
末弟の渾身の論文が審査を通り、東京大学の大学院に入学が決まったという。
昆虫が大好きという一念を貫き、学力が一番無かった末弟の快挙。
「こんなことになるなんて、人の可能性って不思議なものですね。改めて、子供から学びました。」
とても幸せそうな母親の表情が想像できた。