野球が大好きだった。
アニメは巨人の星、侍ジャイアンツ。
漫画はキャプテン、プレイボール、悪たれジャイアンツ、ドカベン、あぶさんなどなど。
当然のように、地元の野球少年団に所属した。
夢と希望を持って、練習に励んだ。
監督、コーチ陣は地元の野球の腕に覚えのあるボランティアの人だったと思う。
六年生になって、レギュラー発表があった。
ドキドキした。
残念ながら、一軍の補欠だった。
…納得できなかった。
レギュラーは、監督、コーチ陣の息子や親族たちばかりだった。
エースは文句なしだった。後に甲子園のマウンドにたったやつだったから。
その他のレギュラー陣は、中学では、それほど強くもない野球部の補欠ばかりだった。
後日談はともかく、
それでも、当時はあきらめきれずに、懸命に練習して何とかレギュラーを取ろうと頑張っていたが、一試合で一打席がやっと与えてもらえるのがやっとだった。
そんな一軍は、公式戦で無勝利に近い成績だった。
ほとんど出番が無いまま、卒業前のチーム内紅白戦に出るチャンスがきた。
エースとの対戦である。
最後の打席で、いろいろな想いを込めて、思い切り振った。
手ごたえがあった。
左中間を抜けた長打コース。
懸命に走った。
一塁、二塁、三塁と夢中で走った。
三塁コーチは止めたが、何だか止まりたくなかった。
逆らいたくなった。
制止を振り切って、
ホームに突入、滑り込んだ。
アウト!
試合後、暴走だと注意をされたが、全く後悔など無く、
むしろ、清々しい気持ちで溢れていた。