死ぬはずだった話である。
幼い頃、誰でもいとこの家にお泊りに行く事を何度か経験があるのではないだろうか。
私も夏休みがくる度に、毎年のように遊びに行っていた。
近くに観音様があって、子供の遊び場になっていた。
私もいとこの友達と混ざって、観音様の敷地内で遊んでいた。
尿意をもよおした。
我慢できなくなって、観音様の敷地内でやってしまった。
それを知った遊び仲間たちの空気が一変した。
バチがあたるぞ。
たたりがあるぞ。
ただではすまないから。
何かを恐れるように口々に言った。
よそ者の私にはぴんとこなかった。
そんなことあるわけないじゃん。
遊び仲間の変貌ぶりに驚いた私は自分に言い聞かせる様につぶやいた。
お昼ご飯にいとこのうちに帰り、その事を伯母に話した。
伯母の様子が一変し、慌てて、お清めの塩を持って、私が用をたしたところにかけていた。
みんな大げさだなあ。
お昼ごはんを終えて、再び仲間が集まって、「泥棒巡査」をやることになった。
言ってみれば、組織的かくれんぼだ。
私には絶対に見つからない自信がある場所があった。
観音様のウラのブロック塀だ。そこにぶら下がっていれば絶対に見つからない。
しばらくして、オニが近付いてきたので、ブロック塀にぶら下がったまま少しずれることにして、最上位のブロックを一つずつ確かめるように、ぶら下がりながら動いた。
やばい。
手応えが全くなく、ブロックにつかまったつもりが、一瞬なくなってしまったかのように、からぶったのだ。
二メートルぐらい下のアスファルトに叩きつけられた。
道路に大の字になって、身体がしびれて思うように動けなかった。
次の瞬間、目を疑った。
ブロックが落ちてきて、目前にせまっていた。
ぐしゃ。
頭が潰れた。
と思った。目をおもいきりつぶった。
どがっ。
耳をかすめた。
頭の真横で、ブロックが砕け散った。
何が起こったか把握できないまま放心状態だった。
仲間が集まってきて、言った。
ほらね。
やっぱり。
観音様だ。
と薄笑いを浮かべなから口々に言った。
ぞ~っとした。
一目散にうちにかえった。