大声をあげて、目を覚ますことがある。
その夢を覚えている時と、そうでないときがある。
きっとあれがトラウマになっているのだろう。
13歳のとき、水田に水がいっぱいのころなので6月ごろ。
部活帰りに、突然うしろから自転車ごとバイクに跳ねられた。
何が起こったかわからなかった。
気づいたら、水田わきの水路に倒れていた。
もうあたりは薄暗くて、顔は見えなかったが、ヘルメットをかぶった男であることはわかった。
頭をわし掴みされて、水路の水底まで沈められた。
水底の泥の中で、生まれて初めて死を覚悟した。
一瞬、男の手の力が弱くなった感じがした。
僕の中で何かスイッチが入った。
こんなところで絶対に死ねない。
手を振りほどき、逃げた。
水田のあぜ道を必死で。
男はバイクで追っかけて来た。
どれぐらいの時間が経ったかわからない。
あたりは全く民家のないところだったので、
どこに身を隠したかも覚えていない。
ただ、全身泥だらけの自分が悔しかった。
バイクのナンバーを確認しなければと思った。
男があきらめて、去る時に確認できた。
後日、犯人が逮捕された。
自衛隊員で、むしゃくしゃした気持ちを晴らすためにだれでも良かったそうだ。
犯人の年老いた母親が土下座して詫びている姿を覚えている。
41年経った。
今朝も…。
悪夢はつづく。