私はタバコは吸わない。
たぶん、一生吸わない。
子供のころから、両親を含めて、喫煙者の無法ぶりを目の当たりにしてきたから。
そう思う決定的なことが…。
高校のときのGrammar英語教師は中年の女性だった。
もの静かなインテリという感じ。
その先生の授業は理路整然としていて、比較的にわかりやすい先生だった。
ふつうの….。
ちょっとヤニくさいのが気になっていたが。
ある日、その先生の授業が終わろうとしているとき、先生のチョークを持つ手が震えているのに気付いた。
先生の様子も何やら落ち着きがなく、チョークも何度も落としていた。
チャイムが鳴った。
その途端、あいさつもそこそこに教室を飛び出していった。
チラリと見えた表情は苦痛に歪んでいるかのようだった。
友人と2人で後を追って、先生が駆け込んだ準備室を覗いた。
衝立ての向こうの喫煙スペースで、まるでジャンキーのように振り乱した様子でタバコに火をつけるすがたがあった。
目が完全にいってしまっていた。
そこにいるのは、かなり重度のニコチン中毒患者だった。
こんな場所二度とちかづかないと心に決めた。