社会人2年目の真冬だった。
仕事が深夜までかかり、帰りが午前2時過ぎになった。
いつもなら、同じ職場のアルバイト大学生2名と行きつけの中華料理屋で
ラーメンを食べて帰宅しているころである。
愛車のMR2に乗り込み、エンジンをかけた。
いつもと違う感触を感じつつも、疲労困憊の為にそのまま
スルーで車をスタートさせた。
家路の半ばぐらいの国道で、エンジンが咳き込むような感触を覚えた。
やばい!
その時思い出した。
昨日からemptyランプが点灯していたことを。
点灯しても70~80kmは大丈夫と甘くみていた。
考えてみれば、昨日、今日でそれぐらいはすでに走行している。
人生初のガス欠をやらかしてしまった。
しかも、地方の真冬の午前2時過ぎの国道なんて、信号すら点滅に変わって
いるぐらい車は走っていない。
片側3車線のはじに車を停めた。
当時、24時間営業のガススタはわずかながら存在していたが、スマホで検索
なんて便利なことができなかったので、カーナビで探して、電話をかけまくった。
結果は、すでに閉店しているか、対応を断られるかだった。
たまに通る車は、私の車に気づくこともなく、通り過ぎていく。
ボディカラーをブラックにしたことを後悔した。
とはいえ、全く知らない人に助けを求める気にもならず、こんな情けない事態に
友人や家族を付き合わせる気にもならなかった。
恥ずかしすぎる。
因みに当時はJAFに加入はしていなかった。
車中泊を覚悟した。
このMR2という車は、2シーターで狭いことで有名である。
笑うしかない。
その時、覚えのあるナンバーの車が通り過ぎて行った。
いつも仕事帰りに一緒にラーメンを食べる大学生の車だった。
気付くわけない。
こんこん。
眠ろうと目を閉じていたら、窓をノックする音がした。
「◯◯さん、こんなところでどうしたの?」
先ほど通り過ぎたはずの大学生が引き返してきてくれたのである。
次の日の帰りは、ラーメンだけでなく、胸やけがするほどの大盤振る舞い
をしたのは言うまでもない。