高1の初夏だったと思う。
満員電車が嫌で、片道12㎞を自転車で通学していた。
通学路は岐阜城がある金華山のふもとの長良川沿いの道である。
朝、出るのが遅れて、焦っていた。
遅刻ぎりぎりだ。
猛スピードでとばした。
この道は車の量は多いが、観光地ということもあって、道の両側には大きな木々が残されている。
僕はこの通学路をかなり気に入っていた。
その木々を通り抜けて、鵜飼の屋形船が停留しているところにさしかかったときである。
懐かしいなあ。久しぶり。
中学の時の友人である。
ニコニコ笑っていた。
いや、同じクラスになったことはないから、単なる知り合いレベルかな。
どうしたの?
こんな時間に、こんなところで? 学校は?
彼はニコニコ笑っていた。
ごめん。遅刻しそうなので。行くよ。
彼には悪かったが先を急いだ。
その日の夜、電話があった。
今朝出会った友人が自殺したという知らせだった。
親との喧嘩の後、衝動的に首をつってしまったそうである。
今朝はあんなにニコニコして元気だったのになあ。
なに馬鹿なこと言ってるの?
奴が自殺したのは3日前だぞ。
絶句した。
そう言えば、戦国時代に激しい合戦が多かったあの場所は、霊界に通じる場所としても有名だそうだ。
僕は通学路を変えた。