祖母のお見舞いに行った時のことだ。
心臓弁膜症という病気を患っていた祖母は、入退院を繰り返していた。
私が幼い頃から、毎日、手のひらいっぱいの薬を上手にオブラートに包み、一気に飲み込む様子をじーっと見ていた覚えがある。
一時の危険な状態を脱して、面会ができるようになったということで、母とふたりでお見舞いに行った。
祖母は、身体の調子が良いようで、とても機嫌が良かった。
祖母の病室は、8Fでとても見晴らしがいい。
窓からは、他の病棟が見え、眼下の駐車場には、職員や見舞客の車であふれていた。
祖母の面倒をみている伯母と話をしていると
突然、
どーん。
がしゃーん。
という音の後に、
けたたましいクラクションの連続音が鳴り響いた。
車の衝突事故?
ちがう。
ここは病院の敷地内なのでそんなはずはない。
伯母がいち早く何かに気づいたらしく、すばやく祖母の直近のカーテンを閉めた。
目くばせされたので、母と一緒に伯母の後について病室を出た。
「飛び降り自殺。若い子みたい。」
「入院が長くなっているおばあさんが見て、変な気を起こしてはいけないから。」
あとで詳細を聞いたところ、
病気で何カ月も入院している女子高生が、将来に絶望して飛び降り、駐車場の車の上に落下したということだった。
それにしても、あの短時間でほとんどの状況を把握し、行動に移す伯母には驚くばかりだ。
普段から祖母のことをいつも考えているからなのだろう。
愛情ってすごい。